次に読む本はどのように選びますか?
ブルデュー、本田由紀、ハンナ・アーレント、等、書くだけでまるで賢くなったような気がしますね。自分を賢く偽る誘惑には抗えません。コミックを紹介すれば逃れられるのでしょうか?マンガ大賞を受賞した東村アキコのかくかくしかじか、海月姫や信長のシェフ、のだめカンタービレを読みました。最近のことです。
特殊能力と見える世界
絵画、料理、楽器等の能力があれば日々の生活で感じることが違ってくるのでしょうが、そんな特殊能力はありませんので図書館で本を読みながら日々過ごしております。美術史、音楽史にも興味があります。料理史というのははたしてあるのでしょうか?
前置きが長くなりました。さて、あまり詳しくない分野で次に読む本はどのように探すべきでしょうか?ということを考えたのでそれについて書いてみたいと思います。
納得できる範囲でフェアでありたい
本田由紀著の教育の職業的意義を読んでおります。
- 作者: 本田由紀
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/12
- メディア: 新書
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本書は教育社会学という分野の本で、データをよく参照・吟味しています。次に読む本に同じ著者の著作で理解を深めたり、扱われているデータに対する理解を深めるために統計学を手に取るのも良さそうです。
今回、本書で心に残ったのは、第5章の『「教育の職業的意義」の構築に向けて』において本田由紀が名指しで批判した小玉重夫が提唱する「シティズンシップ教育」でした。
例えば次のように批判しています。
「教育の政治的意義」と「教育の職業的意義」の、いずれがより重要であり優先されるべきか、といった議論が、一般社会から見れば馬鹿馬鹿しいことは言うまでもない。
と断定した上で、
にもかかわらず、ここで「シティズンシップ教育」論にこだわるのは、それを掲げる教育学において、暗黙裡に「政治的意義」の方に価値が置かれ、「職業的意義」を全否定しないながらも低く見、議論の埒外に置く傾向が看取されるからである。
と論じています。ここではこの議論の詳細には触れません。
本田由紀は職業的意義のある教育体系の重要さを説き、若干ながら具体的な教育カリキュラムにも触れています。本書は社会学者として「いま」の不十分さを暴くことに重点を置かれた本書ですが、では、いざ「裁く(問題の解決をする)」段になれば教育学の観点からの支援・協力は不可欠であるように思います。
将来的には協力することが想像されますが、敢えて批判しているように見えとても興味深いです。こうなると、やはり、小玉重夫の著書を読まないわけにはいかないと思うのです。
社会学はどこまで暴けるか?
最近、本田由紀はtwitterで次のようなつぶやきをしていました。「暴かなければ対処できない」のは間違い無いと思いますし、対処できるか?もわかりませんよね。
社会学は教育を通じた社会階層の文化的再生産を暴いたけれど… - サイバーメガネのサザンクロスシティ http://t.co/8mJMNRhrNR暴いたから必ず対処できるとは限らないが、暴かなければ対処できない。
— 本田由紀 (@hahaguma) April 6, 2015
社会学者の知見が未来の社会が良くなる方に活かされると良いと思います。
どんな本でも、読んだ後にゆっくり考える時間を取るようにしています。ただ、取り扱っている問題が大きすぎかつ複雑すぎると手に負えないような、個人が無力であるようにも思えます。
小玉重夫
1960年、秋田県飯田川町(現・潟上市)生まれ。東京大学法学部政治学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。慶應義塾大学教職課程センター助教授、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授などを経て、現在、東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は、現代アメリカにおける教育思想、戦後日本における教育思想史。学部時代は佐々木毅、大学院時代は堀尾輝久、汐見稔幸らに師事。 現在は、公教育の公共性問題を中心に、政治性を把捉可能なパラダイムとしての教育学を構想している。